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ラバト

2016.02.10

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カサブランカでの全力取材を終えて、モロッコの首都ラバトへ。

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夜ホテルにチェックイン。シャワーを浴びて食事へ。
とにかく、眠い。眠すぎて、無言。
9時間の時差はなめたらいけない。
食事を待つ時間も、ふっと気を抜くと能面みたいな顔になっている。

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前の日に、三方舎の今井さんがその経験値から、
「必ず夜中の2時に起きてしまうから」と言っていたけれど、
こんなに眠いんだからおきるわけないだろう、と思っていたのに、ばっちり2時に起きてしまった。で、なんで2時に起きてしまうのか、謎はとけないまま。

さてさて、2日目も全力取材。
まずは、工房をふたつ訪問。

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今回のポイントのひとつには、既に発注してある新しいデザインでの制作過程の確認というのがある。現在すでにある「GOSHIMAロイヤルコレクション」に続き、そのセカンドクオリティとなる「GOSHIMAトラディショナルコレクション」、そして、その次のサードクオリティの絨毯があって、そのセカンドとサードの絨毯はモロッコ内の数カ所にわけて作られている。

これらのクオリティの違いは、織り子さんの技術や糸の細さ、染色の技術等々、様々な要素から品質のランクが設定される。

まずは、サードクオリティを制作している工房へ。ここでも女性たちが、淡々と作業していた。覚えたての「サラマレーコム」を多用。他、言葉もよくわからないので、笑顔でなんかひとこと言えばなんとかなる戦法。

織り子さんの手元をのぞいたら目が合って、たぶん「ここに座りなさいよ」と言ってくれたみたいだったから、横に座らせてもらった。そして、また、たぶん「織ってみる?」と言ってくれたみたいだっから、うなずいたら糸を渡してくれて結び方を教えてもらった。

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で、また、たぶん「あら、できるじゃない。じゃあこれでここね。」と糸を切るためのナイフも渡され、はじっこの部分をまかされた。会話はすべてが不確かだっけれど、たぶんだいたい合っていた。

織り子さんはすごい早い手さばきでひと結びひと結び織っていく。早送りの映像を見ているようだった。

ここでもまた、昨日同様、この工房でこの瞬間見たことや触れたことの証、そして、この絨毯を使うひとの幸せを願って、縁起がよいとされている「8」本の糸を織り込ませてもらう。

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この工房では、現在サードクオリティの制作でたくさんの織り子さんが働いていた。
最初は緊張ぎみだけど、慣れるとすごく元気で明るい。

「とにかく笑わせたい」という、三方舎の今井さん。
変顔したり、わざと名前を間違えたり、不用意に話しかけたり、笑わせては場を温めていた。
どうやら「言葉の通じない人を笑わせることがでるひとはものを売れる人」という持論があるらしい。その持論が正しいかどうかはわからないが、楽しいということはいいことである、というのは確か。

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一番小さなサイズを織っていた織り子さんのチームに挨拶する。

この柄をデザインしたんだと伝えた途端、たぶん、「これをつくったひとか!難しいんだから!」と言われたような気がした。たぶん、そう言われた気がする。デザインペーパーをさしてなにか言っていたから、たぶんそうじゃないかと思う。だから、「え!すみません!楽しみです!」と日本語で返しておいた。

実は、そのたぶん的なやりとりには意味がある。そして、サードクオリティには大きな思いもある。現在最高品質「GOSHIMAロイヤルコレクション」はその技術の高さから、織れる人が限られている。もっと技術があがり織れる人が増えて欲しい。そのため、サードクオリティのデザインは、「GOSHIMAロイヤルコレクション」の要素をもちつつ、簡略化したデザインのもと、技術の向上や、いつかはロイヤルコレクションを織れるようになるように、という願いを込めて制作を依頼している。それでも難しいものは難しいのだ。

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だけれど、できないからこれぐらいで、というものの見方ではなく、目的地に辿り着くためには、なにを身につけたらいいのか。と考えて行くと、細かい模様をきっちり織りあげていくには、技術と経験が不可欠となる。まずは、その経験をしていくこと。時間をかけてでも挑戦していくこと。

織り子さんだけではなく、その周りの環境を作っているひと、デザインする人、みんなで上質なものづくりに取り組む。そうやって先をみる仕事の在り方をサードクオリティで体現している。

 

違う部屋には既にいくつか織りあがり、これから洗ったり、規定の長さにシェービングしたりして整え仕上げる作業の前の段階だった。素朴な雰囲気で印象がよいものができていた。三方舎さんと工房のオーナーのほうで、仕上がりの弾力や、フリンジのデザインの仕様や、シェービングの厚みなどの検討が行われる。そして、私たちが日本へ帰る前に、ここで検討したことをやってくれるということになった。感謝。

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続いて2つ目の工房へ。

ここでは、セカンドクオリティである「トラディショナルコレクション」の制作が進められていた。

デザインの種類は10パターン以上は出している。サイズ展開の種類も含めたら60種類くらいだろうか。先のサードクオリティのものに比べると、糸は細く目も細かい。品の良さ、みたいなものを感じる。小さな部屋で、コツコツと制作は進められていた。

ここで、すこぶる感動したことがあった。

絨毯には、織り子さんへどんな柄をつくるのか、ということを指示するための「デザインペーパー」というものがある。元の絵を方眼紙上にドットで描いて再現していく。これがないと織り子さんは図柄を織れない。もちろん、感性のおもむくまま織り上げる絨毯もあるし、熟練の技術をもった織り子さんたちはデザインペーパーがなくても複雑な模様を織れる人もいるみたいだけれど、最初は必ずデザインペーパーが必要となる。

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この「デザインペーパー」をつくるという仕事をしているひとがいた。
いわば、私たちと織り子さんを繋ぐ通訳者のような人。
もとの秩序のない絵に、決まりをつくり、相手が理解できるように、視覚化する。
これがデザインなんだと思った。

では、私たちがしていることはなんなのか。
私たちが描く柄はなんなのか。これは大きな問いだなぁと感じた。

GOSHIMA絨毯は多くのプロフェッショナルの集合体で出来ている。
それぞれの役割のなかで、その与えられた役割を最大限のちからで担っているひとがいる。

わたしたちが果たす役割はきっと、初めの一歩を踏み出す、世界をみせる、生み出す、そういう表現のデザインなんだと思った。これはまた変わるかもしれない考えだけど、今はそう思った。

表現としてのデザインと、実現するためのデザイン。

絨毯にはふたつのデザインが必要で、このどちらかが欠けてもだめで、それは、GOSHIMA絨毯の特徴となり、強みとなり、たしかな品質の一部になるのだと思う。

「デザインペーパー」をつくるという専門がいた、という事実。彼は、こちらが発する「すごい!」の言葉の連発にとても喜んでいたように思えた。そして、なんかよくわからないけれど、「そうだよね、だいじだよね、この仕事大事だよね、これこれ」という空気感が共有できたんじゃないか、と感じた。

専門分野の人同士で共有出来る空気ってある。それは、この場においては生やさしい共有ではなく、次のステージへ昇るためのいいちからが生まれる共有、のような感じに思えた。

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自分ひとりの仕事などたいしたことはない。

そのたいしたことないひとりの仕事をどうやって膨らませていくか、どんなひとたちとともに磨いていくか。その答えを共有できるひとたちが、こんなに遠くの国にたくさんいたんだ、ということに大きな勇気をもらった気がした。

とにかく眠いんだけれど、脳みそだけは淡々と情報を整理しているすがすがしさがある。

 

photo:Tooru Takahashi
text:Akane Kobayashi