#011

カサブランカ

2016.02.17

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エッサウィラの朝。
近くの港で、船の大集合と飛び交うカモメ。

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カモメがアーと鳴き、フリーな犬がタッタッタッタッタッタッと横切っていく。
働く男達が、カンカンカンと金槌で何かを叩いて船をなおしたり、立ち尽くして煙草を吸っていたり、自転車で通り過ぎたり、まるで絵に描いたような港町。

世界遺産にもなっているエッサウィラの旧市街にはマーケットがあり、アーティストも滞在していることから、小さな工房が連立していたりする。夏にはたくさんのひとで賑わうらしい。ふらふらと歩いて、お昼ご飯は市場で卵とミントとオレンジを買ってその場で調理してもらう。オムレツタジンとミントティーとデザート。毎日の食事はヒシャムさんがなんでも段取りをつけてくれるので、モノの金額のだいたいの相場も曖昧に過ごした。

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それにしても、モロッコでは必ずといっていいほど最後にフルーツのてんこ盛りが出てくる。リンゴ、オレンジ、バナナがそのままちょっとだけオシャレに盛られてくる。お皿にナイフがついてくるので、自分でカットして食べる。で、甘い甘いミントティー。中国茶とミントの葉、それに砂糖が入っている。銀のポットを高い位置に持ち上げて、じょぼじょぼとコップにサーブしていく。場所によって、ものによって、全然味が違う。この期間、だいぶ、砂糖を摂取。

このパターン化した段取りよい食事スタイルはそれはそれで悪くない。
旅も終わりに近づくと、タジン鍋も、パンも、ちょっとだけ名残惜しい。
ちょっとだけ。

お腹いっぱい。ずっとお腹いっぱい。

 

エッサウィラを後にして、カサブランカへ向かう。
最初に降り立ったカサブランカ。一周して戻ってきた。カサブランカは都会だ。人と車でぎゅうぎゅうしている。クラクションの音が都会っぽい。

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あの、永遠に続く恐竜がでてきそうな広大な土地がすでに懐かしく思える。

都会と村の強弱が激しい。色づかいのくっきりさと重なるように思える。
極端で大味なんだなぁ。

 

最後の夜はヒシャムさんのお家でご馳走になった。
家族も交えておいしいおいしい手づくりの料理をいただく。

お土産に日本のメジャーなお菓子を何個か持っていった。
とりあえず片っ端から味見して栄えある1位に輝いたのはブルボンのバームロールだった。
前回今井さんが来たときには東京バナナがダントツの1位を飾ったらしい。

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さてさて、最後の最後に大事なこと。

2日目にラバトの工房で帰国までに仕上げをお願いしていたGOSHIMA絨毯・サードクオリティと、セカンドクオリティのアーモンドの木の柄ができたとのことでヒシャムさんのお家に届けてもらっていた。

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毛足の長さ、模様の出方、フリンジの仕上げや目の細かさ等々をチェックする。まずまず、だけれど、帰国してから早急に修正をかけること、更なる提案をすること、まだまだこれでいい、ということはない。

同時に、ロイヤルコレクションのクオリティを確認するサンプルも一緒に並べ、3種のクオリティを確認。一目瞭然で、それぞれのスペックの特徴がクリアになった。こうして比べると間違いなくロイヤルコレクションのクオリティが上質であることがわかる。

糸の細さや模様の細かさ、色むらをいかした表現力において、群を抜いている。

これまでは最も上質なロイヤルコレクションのみであったGOSHIMA絨毯が、それに続くセカンド・サードクオリティの誕生により、モロッコの大地で育まれる技術や表現で実現出来る絨毯のクオリティの幅が広がり、そのことがロイヤルコレクションが具体的にどう上質なのか、ということを明確にしてくれている。

買い付けの現場で感じた、目の前のこのものにどうして心奪われるのか、ということと同じく、どうしてこれを「いい」と思うのかを具体的に理解することで、伝える側のボキャブラリーは増えるし、手にするひとはより深く上質である意味を納得できるだろう。

その明確になったスペックにより、たった1本の糸の細さからでも多くのことが語れるようになる。ロイヤルコレクションの気品ある幾何学模様のデザインの本質に迫れるようにもなる。

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ヒシャムさんのお家からホテルまで、トラム(路面電車)で帰った。
モロッコで始めての公共交通機関の利用。そこにも、星の紋様を見つける。同乗してくれたヒシャムさんからイスラム教の話を少し聞く。

街を歩けばいたるところに星の紋様があしらわれたデザインがあり、イスラム教の国にとっては馴染みのある紋様らしい。イスラム教は偶像崇拝が禁止されているので、動物などのかたちあるもので表現が出来ず、幾何学模様で宗教心を表現した。完璧は神様だけのもの。だから紋様は一部わざと欠けさせることもあるという。それとは関係ないけれど、日本の大工さんも、建物をたてるとき、完璧に作ってしまうのではなくわざと途中で終わらせて仕上げるという話を聞いたことがある。

完璧、完全というのは尊いものなのかもしれない。だから、わたしたちは不完全なまま、修行のように日々を重ねていくのかもしれない。

 

出発の朝がきた。

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荷造りをする。
そういえば、壺があった。おっきいな。おっもいな。

三方舎の松澤さんは、砂漠でみつけたイガイガのついた、素敵に枯れた植物を、ビニール袋に入れてずっと移動していた。時に車のトランクを開けて風が入り込み、舞い上がって飛んで行ったイガイガを走って取りに行くこともあったし、不用意に触って、イガイガに刺されたひともいた。ついに、あのイガイガも日本へ出発する。ブログ画像カサブランカ-20 ブログ画像カサブランカ-21

 

カサブランカ空港へ向かう前に、カサブランカの海の上に建つモスク、ハッサン2世モスクを見学。見上げると首がいたくなるぐらい大きい。敷地は東京ドーム2つ分くらいの大きさで、2万人が礼拝できるらしい。数字で例えられても全然ぴんとこない。スピーカーやエレベーター、開閉式の天井など、だいぶ近代的な部分もある。ブログ画像カサブランカ-24 ブログ画像カサブランカ-22 ブログ画像カサブランカ-23

メッカの方向を示す壁のくぼみや、タイルの壁の幾何学模様に込められた宗教心。
イスラム教徒は死んでお墓に入るときには顔をメッカのほうへ向けて埋葬すると聞いた。
国を知るうえで、宗教は欠かせない。知らないことが多すぎるし、少しずつ知ることが、いいデザイン、いいものづくりへつながることがあるように思えた。

 

カサブランカ空港に着く。ブログ画像カサブランカ-26

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運転手のお父さん、シュクラン=ありがとう。
さようなら。お元気で。

そして、Sanpousha Moroccoのヒシャムさん。大変お世話になりました。最後の見送りまで、そして、出国審査のゲート前で撮影機材のバッグが怪しいと引き止められた私たちを現地の係員に説明をし、処理してくれた。最後までご丁寧にありがとうございます。

ヒシャムさんは、日本とモロッコをつなぐ大事な役割を担っている人。コーディネートという仕事は規模が大きかろうと小さかろうとやることは変わらない仕事だ。だからこそ、手を抜けないし、頭の回転も早くないと立ち振る舞えない。ヒシャムさんは、数カ国語が話せるらしい。他国の言語を話すのは楽しいと言っていた。興味とか好奇心は世界を広げてくれるんだなと、ヒシャムさんを見ていて心から思う。

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今井さんが4、5年前ヒシャムさんに出会って、そこからモロッコとのつながりが始まったと聞いている。出会った頃のヒシャムさんは、全く絨毯の世界を知らない状態だったという。それでもこうして一緒にやりながら、今や糸の染色についても勉強をし始めている。学ぼうとする姿勢、仕事を面白くしていくちから、学ぶことがたくさんあった。

何事も、一からつくりあげて来た人のすごさには頭があがらない。

私たちは、周りの人が多くの労力をかけてつくりあげてきた縁にのって今ここにいる。まだまだ誰かが作ってくれた環境のなかで自由に泳がせてもらっているところもある。今のうち、そのチャンスの機会を借りて、育たなければいけない。

人との関係を作ること、ものごとを動かす仕組みを作ること、意識の高い人と一緒に仕事をすること、そこでロマンを描くこと。ECサイトの開設は、これから一から自分たちの手で、信頼出来る人達とともにつくりあげていく、今やらなければいけない挑戦。

今回、「せっかくモロッコに行くならば、リアルタイムで感じたことを発信してみよう」と、急いでプレブログの開設をした。成田から始まって、時折wifi環境の不安定さや、9時間の時差による眠気や体力問題、ちょっとした事件などがあり、リズムよく順調にアップとまではいかなかったけれど、三方舎の今井さんと松澤さんに、移動の車中で打ったテキストをその場で酔いそうになりながら確認してもらったり、カメガイアートデザインの亀貝さんと明間さんに、時差がありつつも、テクニカルな面で丁寧にメッセージでのやりとりをしてもらったり。

これからどういう視点で展開していこうか、そのヒントが、この記録にあるように感じています。

「全力取材」なんて言いつつも、まだまだ全力からはほど遠い。
全ては結果を出すことで評価される。
これから、これから。

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最後に、私たちに貴重なチャンスと経験を与えてくださった三方舎さん、描く世界の実現のためにご協力いただいているカメガイアートデザインさん、モロッコの魅力を教えてくれたSanpousha Moroccoさん、そして、この取材記を読んでくださった皆さん、心から感謝致します。この経験はかけがえのない財産となりました。ありがとうございました。

 

(完)

 

photo : Tooru Takahashi
text : Akane Kobayashi

 

※今回この「MOROCCO全力取材記」で取材したことは、製品となって今春日本に入荷予定です。4月にオープンする「風の壷と羅針盤 ECサイト」でも商品をご紹介したいと思います。また、同じく4月に三方舎さんの実店舗・GOSHIMACollectionにて開催される絨毯展でも実物を御覧いただけます。是非、ご期待ください。