休日に、家族揃って家具屋さんにインテリアを見に来るなんて、なんて幸せな時間なんだろうか、と思う。売り場の大きな窓ガラスから駐車場を眺めていると、嬉しそうな表情がたくさん見える。
しかも、季節は春。
なんでも新しく思える春。
家具を「買う」、ということを達成するには、
買う前に、「選ぶ」ということがあって、
その前に、「見る」ということがあって、
その前に「知る」ということがある。
まずは「知る」ということだと思う。
ものの善し悪しや、金額のこと。
この世界に誕生しているものを「知る」ということ。
そうして、いいもの悪いもの、知れるだけ知っていく。
できるだけ実物を、そして本物を、見れるだけ見ていく。
先日とある作家さんのインタビューでこんな話があった。
手づくりで作品を作っている作家さんが大量生産のものとの違い、自分の作品をどんな風に見て欲しいかを語っている場面。
“一度見るということも大事だなと思うんです。絶対高いと思うんです。ですが一度見ておいてもらうと、他のものと比較できるから、やっぱりあれは他にはないものだったんだとか、これだったらあっちのほうがいいなとか。あそこまで高くなくてもこちらで十分だね。みたいに、お客さまが選ぶこともできるから。そして、一度使ってもらうとやっぱりよかったねって思ってもらえたりとか。気分があがるとか思ってもらえる。”
自分で比較してみる、というのは大事だし、面白いことだと思った。
その比較をするためには、たくさん見ないといけない。先入観を取っ払い、目の前にあるものが、自分にとってどういうものなのか、そうやってたくさんのものに触れていく。その「経験」を使ってものを買うことができたら、値段の高低ではなくすごく楽しいのではないか、と思った。
「お金がないからこんな高いもの買えない。」
その通りだと思う。
「簡単には買えない。」
その通りだと思う。
「同じようなものでもっと安いものでいいわ。」
それもそうなんだと思う。
でも、売り場にいてお客様の反応を見ていると、ちょっと違う。
「これがいい」
「やっぱりいいものが欲しい」
そんな風に見てもらえているような気がした。すごく嬉しかった。
私たちは、自信をもって「これがいい」と思って作ってきたし、「これがいい」と思ってもらえるように売り場も作っている。だから、その思いが届いているなぁと思うとじーんとする。三方舎さんの接客越しに、ひそかにじーんとしている。
「GOSHIMA絨毯は何か違う」とお客様は言う。
でもその違いはなんなのかはわからない。
「かわいいけれど可愛いすぎない」とお客様は言う。
かわいい、と言われて嬉しい。
「品がありますね」とお客様は言う。
背筋が伸びる。
みんな頭のどこかで何かと比較をしているのだなぁと思った。
そして、その比較の果てに、
「これがいい」
と思ってくださっている。
一枚、一枚の世界感が見る人の足を留めている。
「出会ってしまった」という方もいた。
出会ってしまって、
それをどうしたら手に入れられるかを考えて、
ちょっと諦めたり、
いけるんじゃないか?と期待してみたり、
いや、やっぱりまたいつか・・と悔しがってみたり、
これにします!とキメてみたり。
売り場では、真剣に一枚に向き合ってくれるお客様の姿があって、
これまでの、企画からデザインを起こすときの必死な自分の姿と重なって、
心の奥底で、なんともいえない感動に包まれている。
昔、初めて本物のピカソの絵を東京の美術館で観たとき、その絵の前に立って、「あぁ、この絵の前のこの位置にピカソが立っていたんだ・・」と思って感動したことを思い出す。
絨毯の前には、織り子さんが確かにいた。
お客様が立つ前に、確かに織り子さんがいた。
その前には、わたしたちもいた。
こうして、絨毯の前に立つ人がどんどんスライドしていく。
絨毯は色んな人と出会って、素敵ねと言われて、褒められて、触れられて、日の光に当たって、日々輝きを増してくのだと思う。
多くのひとに来場していただいた。
そんな幸せに包まれた日曜日。
この展示会でそれぞれ一枚だけ入荷してきたふたつのデザインがある。
とっておきの箱入り娘のように展示。ぽっと当たるライトがドラマチック。
一枚に向き合う。
インテリアとしてだけではなく、この目の前にある絨毯がこれからの自分の、または誰かの人生にとってどんな存在と成り得るのか、向き合って想像してみる。
「砂漠」
長い長い距離を
自分の足で歩いて
旅をした
足の裏の皮膚と 心は
その長い長い旅を忘れない
次の一歩は
どっちの方角か
長い長い道を、一生懸命歩いて来た人にしか選べない道があります。息を切らしてのぼりつめたその先に、また新たな道が待っています。そこからどっちへ行くかは、その人にしか決められません。むしろ、一生懸命に歩いて来た経験があるからこそ、どっちに行くべきか、広い広い大地のなかでも決定することができるのだと思います。そんな強さと勇気を持って新たな道を歩む人に、砂漠の砂の感触が重なりました。
“人生の節目と砂漠を踏んだときの感触は似ているような気がしていたけれど、実際に砂漠に来てみて、そのイメージはそう遠くはなかったような気がする。”
(展示会場 キャプションより)
「スターダスト」
上下左右で地球の丸さを感じ
陽が沈めば沈む程
世界が
広く深くなっていく
暗くなって
見え始める景色があった
小さい頃、夜の空を見上げて、あぁ、夜も雲があるんだ、と初めて知った夜があった。雲は昼にしか見えないんだ、と思い込んでいたから、びっくりした。この世界は、思い込んでいると見えないものでいっぱいだ。だから、私たちは勉強をする。世界は広く、自分はたったひとつの小さな細胞にすぎないのだ、ということを知るために勉強をする。
“月と星がきれいだった。イメージしていた砂漠=砂丘はほんの一部だ、ということに、夜が明けて景色の全容が見えて初めてわかった。明るくなってわかること、暗くなって気づくこと、モロッコの景色のなかで、感覚が広がっていく。そして、砂漠の横にはちゃんと舗装された道がある、ということも、夜が明けて、太陽の光のもとで知った。早朝、ラクダに乗り砂漠の砂丘で朝日を見た。朝方の砂漠の砂はとっても冷たい。”
(展示会場 キャプションより)
photo : Toru Takahashi
text : Akane Kobayashi
【展示会のご案内】開催中!!
『GOSHIMA絨毯Collection展』
〜Traditional Collection発表会〜
4月9日〜4月24日
10:00~19:00
会期中無休
会場:インテリアショップボーデコール特設展示場
http://www.sps-i.jp/event/20160409_BD/index.html
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No,11
GOSHIMA [Tradithional Collection]
砂漠
1790×1260(mm)
490,000円(税込)
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No,12
GOSHIMA [Tradithional Collection]
スターダスト
1850×1230(mm)
450,000円(税込)
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