#003

4月17日 日曜日ー新潟(3)

2016.04.23

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2回目の日曜日。
本日も売り場はやっぱり幸せな日曜日。

ちびっこは走り、絨毯の上を飛び回る。
お母さんに怒られる。
そんな幸せな日曜日の売り場。

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一日戻って。
昨日16日は、「風の壺と羅針盤」の風担当・高橋トオルさんの結婚式だった。
新発田・長徳寺さんにて、仏前結婚式。
お経を読んだり、お焼香をしたり、おごそかで、あたたかく、大人らしい結婚式&お披露目会だった。

トオルさんはデザイナー。グラフィックデザインやウェブデザイン、店舗プロデュースや、ブランディング、映像制作、なんだかいろんなことをやっている。

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その中でも、トオルさんの良さはなんといっても「写真」だと思っている。
動いている人や、ものの表情、トオルさんの写真には、その時のトオルさん自身の感動が記録されているように感じる。対象のものが生き生きとしていればしているほど、トオルさんの写真はノリがいい。

鮮度が重要。

だから、いくつかの仕事で同行させてもらっていると、取材撮影後はなんだか魂が抜けたようにぐったりしている。

最初は、なんでそんなに疲れているだろうか、と失礼にも思っていたけど、かなり集中しているんだ、ということを最近は感じている。

空気ごと撮る。心を動かせて撮る。

それはきっとエネルギーがいるんだと思うし、良い意味で不安定な作業。その不安定な感覚のバランスをとりながらシャッターをきっているように見える。一瞬の出来事に集中する。

それは誰もができることではないし、技術と感性の融合なんだと思う。
写真とか全然わからないけれど、そんな風に感じる。

そんなトオルさんと、自ら手がけたプロダクトを自らのちからで「売る」ということに挑戦する話が湧いて出たのは、2015年の夏前だった。

突然ふってきた。
突然きたから、考える暇もなく、そういうことになって、今に至る。

もちろん嫌だと感じたら絶対にやっていないけれど、そこで立ち止まらなかったということは、なにかあったんだと思う。

それを実現させるのは「ECサイト」。

自分たちの表現力で、どれだけ面白いショッピングサイトをつくれるか、ひとつの挑戦。
その挑戦は現在、全力で進行中。

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デザイナーという仕事、ディレクターという仕事は、クライアントがいて成り立つ。誰かの何かの期待に応えたり、またそれ以上の価値を提案していく仕事だ。必ず何かしらの制約があって、その制約のなかで、いかにいいものをこの世に生み出して行けるか、いかに役に立つものを創造し、整理できるか。

そんな仕事だ。

それはそれで面白い。
けれど、その側に、私たちは「表現者」である、という面を持っている。

だから、これから先のことを考えると、その表現力をつかって、自ら社会に仕掛けていけるちからをこの時期に手に入れることに挑戦してみよう、と。

自分たちの得意技を最大限に生かしていきたい。もっともっとできるはず。がむしゃらに走り続けてきた20代、30代を経て、もうすぐ訪れる40代をどう生きていこうか。

そんなことを考えている。

「風の壺と羅針盤」というものは、他者からの制約がない。制約は自分たちでつくり、自分たちの好きなことを好きなように表現するという場所。思う存分表現出来る場所。やりたいことを精一杯やって、楽しくて仕方がなくて、そしてきちんとそのちからで自立していくこと。

「風の壺と羅針盤」のクライアントは、自分たち。自分たちがよりよくクリエイティブな仕事ができるように、自分たちで、自分たちに仕掛けていく。

「風の壺と羅針盤」とは、そういうユニット。

そして、そのユニットの使命はECサイトで結果をだすこと。結果とは、自分たちの表現力を使って、誰かに幸せや楽しさを提供すること。そして、自分たちも嬉しくて幸せになること。

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話は戻って。

 

トオルさんの結婚式で、ご家族にお会いした。
トオルさんと同じく穏やかな雰囲気だった。
トオルさんのお嫁さんのえいちゃんのご家族にもお会いした。
えいちゃんと同じく笑顔が溢れていた。

一瞬で、二人がどんな風に育ってきたのか、どんな環境のなかで育まれてきたのか、すぐにわかった。

すべては、育つ環境でつくられていく。今の自分は、育った環境そのもの。

何を見て、何に触れて、何を食べて、何を知ってきたか。誰とどんな関係で、好きなものや嫌いなものとどう付き合って、どんな楽しいこと、どんな苦しいことを経験出来る環境だったか。

「家族」だけではなく、友人や先生や近所の人。
どんな人とどんな関係でいたか、何を与えられて生きてきたか。

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自分を取り巻く環境が、どうで、なんだったか。
おとなになると、その積み重ねがじんわり滲み出てくるんだと思った。

そんなことを考えたら、ふっと腑に落ちたことがあった。

次の時代を生きる、今の子どもたちのために、私たちがこのクリエイティブな仕事を通して伝えていくのも大切な役割だと。

私には自分の子どもがいるわけではない。これからもその存在があるのかどうかもわからない。だから子どもという存在のためになにかしていくことに確信があったわけではない。

けれど、ふとこう思った。

「子ども」という存在に対して何かを伝えていけるのは、必ずしも「お父さん」「お母さん」という存在だけではない。

この社会環境をつくる、大人たちが、みんなで次の世代に、きちんとメッセージを残していかなければいけないし、残していきたい。

そして、わたしたちは表現者だから、表現物で伝え残していきたい。

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このことが腑に落ちるまえに作ったデザインと向き合う。

丘に生える樹木、見守る星。

今はまだ小さな子どもに贈るデザイン。
そして、未来のその子に贈るメッセージ。

 

“ずいぶんと大きく成長しました

伸びて伸びて

横に小さな木が生えるぐらい

伸びて

ふとみあげると

ずっと守ってくれた星がでていた”

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自分が歩いて来た道。ひとりで歩いてきたと思っていた道。
その道には、必ず見守ってくれた人達がいたこと。
大人になって初めてその人達にきちんと感謝できるように。

 

今は伝わらないけれど、10年、20年経ってようやく伝える事が出来るような、そして、またその先の次の世代にも続く、そんな息の長いデザインとメッセージを、絨毯という日々の生活装置に託していく。

たっぷりと思いを込めて。

こうして、私たちの表現は責任をもっていく。

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この樹木の絵柄のシリーズを織ってくれたのは、イマシン村の女性たち。

ひとりで行って来いと言われても辿りつける自信がないくらい遠かった。
MOROCCO全力取材記#007 イマシン」を読み返す。

あの村の女性たちは、私たちとは違う世界を見てきた。
同じ星に住んでいるけれど、全く違う景色を見て、全く違う色彩に触れ、
お互いわかり得ないことがたくさんある。

理解しようとする心をもつこと。心で触れていこうとする勇気。

この一枚一枚は、私たちと彼女たちの人生の融合だ。
そして、これからは、この絨毯を使う人の人生も融合されていく。

この絨毯のオーナーになる人へ、こんな思いを贈りたい。

私たちが今踏みしめている大地のずっと向こうに、同じように、泣いたり笑ったりして暮らしている人々がたくさんいて、その人々の手作業の集積が、大地を巡ってここに届いていることの奇跡。わたしたちは、ひとつの星に住む共同体。

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世界は広く温かい。
樹木からのメッセージとともにある日々は、この星に住む人々へ向ける愛情を育む。
星に守られて、毎日を丁寧に大切に生きよう。
他人の幸せを願い、そして、自分の幸せも願おう。

イマシン村の女性の、シンプルで美しい表情で微笑んでくれた、あの笑顔を思い出す。

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photo:Tooru Takahashi
Text:Akane Kobayashi

 

『GOSHIMA絨毯Collection展』
〜Traditional Collection発表会〜
4月9日〜4月24日
10:00~19:00
会期中無休
会場:インテリアショップボーデコール特設展示場
http://www.sps-i.jp/event/20160409_BD/index.html

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